「麻雀の扉」というサイトがある。
ツイッターでは何度か紹介しているが、
ブログでも改めて取り上げたい。
作者は「ぴゅー太郎」氏。
以前より近代麻雀でコラムを書いたり
原作を書いたりしているようだ。
恥ずかしながら僕はつい最近まで知らなかった。
トップページに幾つかコンテンツが載っているが、
時系列的には一番下の「麻雀狂時代」からになる。
僕は、たまたま
「麻雀の扉」元祖「麻雀の扉」,神様のキューブとは
から読んだ。
なぜかホラー調の背景。
いかにもオカルト的な文章が続きそうなページ。
しかし、そこに書いてある文章を1ページ読んで思った。
「この人は只者ではない」
知性と情熱、そしてニヒリスト的な屈折。
麻雀というふざけたゲームに貴重な時間を捧げてきた人間だけが書ける文章。
なかなか認め難いかもしれませんが、 半荘を数百回ないしは数千回打ってトータル負けていたら、牌の切り出しの手順がどうであろうと、 それを「弱い」って言うのです。牌をツモって切るだけの単純な 遊戯で、プライドの高いあなたが他人よりも劣っているという証なのです。 大して違う ことをやっていないはず、それどころか実に細かい部分に気を配っているという 思いがあるのに、あなたはなぜかいつも負け組みになる。 気持ちは分かります。ただ単に、悔しいのでしょう? 私は争いを好まない平和主義で、喧嘩なんてとんでもないという気弱な 人種です。殴られそうになったら、土下座してでも殴られない方を躊躇なく選びます。 しかしそんな情けない私ですら、 「麻雀の借りは麻雀で返すのが男の道義」だと思っているのです。
悔しさを他のものにスリ代えて慰めねばならないことだって、長い人生では 幾度となくあります。しかし麻雀はそういった性質のものではありません。
名文だ。本質だからこそ言いづらいこと、それをズバリ突いてくる。
戦略を語る前に、こういうギミックが無いといけないのだ。
そして、こういう文章を書きながら、麻雀については非常にドライだ。
実戦は完全にリアル派のようだが、
徹底して合理派で、ネット麻雀層に近いスタンス。
麻雀に合理的な思考を持ち込む。
ここ最近やっとそれが主流になってきている。
一方では天鳳の成功があり、その前にはぴゅー太郎氏のような
論客の地道な活動もあったのだろう。
とつげき東北が麻雀から一歩引いてから、プロを除けば
表舞台にはなんだかんだで福地誠しか居なかった。
とつげき東北の理論を更新していく者も出なかった。
・・・と思っていたのだが、
実はぴゅー太郎氏みたいな人がいたわけで、
それを気付かなかった、推せなかった責任も感じる。
ただ、ぴゅー太郎氏もまだバリバリ現役だ。
精神論を語るのはそのままに、
直近の連載がより理論寄りになっているのが面白い。
「シャンテントラック」というプログラムを武器に、
話題の何切るに取り組んでいる。
これは福地本の問題もたくさん取り上げられているし、
誰しもが面白く読めるだろう。
麻雀の扉~後編
スピードか、打点か?のこの問題を取り上げた「問題2」
「チートイはイーシャンテンからテンパイまで平均10巡」という
物言いの問題点を緻密に暴く「問題3」などは知的読みものとしてもワクワクする。
そしてこれ。
福地誠のリメイク本でも一発目に登場したキャッチーな鳴くか鳴かないか問題。
これも「問題7」で取り上げている。
記事「いつまでも福地誠頼みでいいのか? 福地誠「麻雀 勝ち組の選択」」
で福地先生に噛みついてしまったが、
「コンピュータでシミュレートしてくれた友人によると、大差でチーが勝ったとか」
の「友人」というのはぴゅー太郎氏だったのかもしれない。
この何切るが呼び起こす知的興奮の源はなんだろうか。
即ち、コアに突きつめていくその精神性ではないか。
例えば福地先生の本には
「売れることを意識してレベルを下げている」が見え見えで
辟易する部分が正直ある。
もちろん、商売考えればそれが当たり前で正解なのだろう。
しかし、音楽でも映画でも、本当に面白いのは尖っている。
「麻雀の扉」何切るは、ネット上のサイトということでストイックだ。
語り口は饒舌だが、それは本質を炙り出す為の饒舌であり、虚飾では無い。
麻雀の本質を探究することに徹しているからこその魅力がある。
実は、「麻雀の扉」に心を打たれて、
先日リアル麻雀でお手合わせ頂いた。
文章通りにスマートかつ熱い人だった。
「タレントが居るのは天鳳界隈だけじゃないんだ」と、
当たり前のことに気づかされた。
やっぱり村に閉じこもっているだけじゃダメだ。
最新の更新に、先日の僕らの邂逅のこともチラッと触れられている。
良かったら探して読んでみて欲しい。
正直なところ、「絶対に売れません」なんてことは言わず、世に問うて欲しい。
いずれにしても、麻雀の本質をつかみたい人、
麻雀の虚しさを感じながら、どうしても離れられない人、
そういう人にこそ読んで欲しい麻雀サイトだ。